社会貢献への意欲と、賢い節税対策であるふるさと納税。この二つを両立させたいと考える30代〜50代の会社員や個人事業主の方々にとって、「UNHCR(国連難民高等弁務官事務所)など特定の国際機関への寄付」と「ふるさと納税」は、それぞれ魅力的な選択肢です。しかし、これらの控除を併用する際に、税制上の仕組みを正確に理解していなければ、思わぬ落とし穴にはまる可能性もあります。
本記事では、UNHCR等への寄付とふるさと納税の控除併用に関する疑問を解消し、それぞれの制度の基本的な違いから、控除上限額の計算方法、そして確定申告における重要な注意点まで、専門的かつ客観的な視点から詳細に解説します。
UNHCR等への寄付とふるさと納税、控除の併用は可能?
「UNHCRへの寄付を通じて社会貢献したい」「ふるさと納税で地域の特産品を受け取りながら節税したい」――このような思いを持つ方が増えています。そこで気になるのが、これら2つの制度による税金の控除は合算して受けられるのか、という点ではないでしょうか。
結論から申し上げますと、UNHCRなど特定の国際機関への寄付とふるさと納税は、両方の制度の併用が可能であり、それぞれで税金の控除を受けることができます。
ただし、控除額の計算方法や確定申告の手続きには、重要な注意点が存在します。特に、ふるさと納税の控除上限額は、UNHCR等への寄付金額によって影響を受ける可能性があります。本記事では、この複雑な仕組みを解き明かし、あなたが社会貢献と節税を賢く両立させるための具体的な道筋を示します。
基本理解:2種類の寄付金控除の仕組みと違い
UNHCR等への寄付とふるさと納税は、どちらも「寄付金控除」という名目で税制上の優遇措置を受けられますが、その仕組みには明確な違いがあります。この違いを理解することが、併用時の計算を正しく行う上で不可欠です。
UNHCR等への寄付(特定公益増進法人への寄付)
UNHCRは「特定公益増進法人」に該当するため、UNHCRへの寄付は「寄付金控除」の対象となります。この寄付金控除は、以下の2つの方式から選択できます。
- 所得控除方式:
- 寄付金額(または総所得金額の40%)から2,000円を引いた額が所得から控除されます。
- これにより課税所得が減少し、所得税と住民税が軽減されます。
- 税額控除方式:
- 寄付金額(または総所得金額の40%)から2,000円を引いた額に40%を乗じた額が所得税額から直接控除されます(所得税額の25%が上限)。
- 一般的に、所得税率が低い方にとっては税額控除方式の方が有利になるケースが多いです。
ふるさと納税(都道府県、市区町村等への寄附金)
ふるさと納税は、特定の地方公共団体への寄付金として扱われます。自己負担額2,000円を除いた全額が、所得税からの還付と住民税からの控除という形で税金から控除される仕組みです。
- 所得税からの還付: 寄付金額から2,000円を引いた額の一部(寄付者の所得税率に応じた額)が還付されます。
- 住民税からの控除: 残りの金額が、住民税の基本控除分と特例控除分として控除されます。特に特例控除分は、住民税所得割額の20%を上限として、全額が控除されるため、実質2,000円の自己負担で寄付ができるのが特徴です。
このように、UNHCR等への寄付とふるさと納税は、税制上の枠組みが異なります。UNHCR等への寄付は「所得控除」または「税額控除」として所得税や住民税に影響し、ふるさと納税は「所得税からの還付+住民税からの控除」として機能します。

この仕組みの違いが、後述する控除上限額の計算や確定申告の手続きに影響を及ぼすことを理解しておきましょう。
【最重要】控除上限額の計算方法とシミュレーション
UNHCR等への寄付とふるさと納税を併用する際、最も重要なポイントは、「ふるさと納税の控除上限額は、UNHCR等への寄付金額に影響を受ける」ことです。
具体的には、UNHCR等への寄付を所得控除方式で申告した場合、寄付金控除によって課税所得が減少します。ふるさと納税の控除上限額は、この課税所得(住民税所得割額)に基づいて計算されるため、課税所得が減ることで、ふるさと納税の控除上限額も減少するのです。
控除上限額の計算式と影響項目
ふるさと納税の控除上限額は、以下の計算式で導き出されます。
ふるさと納税控除上限額 = (住民税所得割額 × 20%) / (90% - 所得税率 × 1.021) + 2,000円
この式の中で、UNHCR等への寄付金控除(所得控除)が影響するのは「住民税所得割額」と「所得税率」です。
寄付金控除(所得控除)により、
1. 課税所得が減少し、それに伴い「住民税所得割額」が減少します。
2. 所得税率が段階的に設定されているため、寄付金控除によって適用される所得税率が下がる可能性があります。
これらの変化が、結果としてふるさと納税の控除上限額を押し下げることになります。
シミュレーション例:UNHCR寄付がふるさと納税の上限額に与える影響
以下の表は、年収と家族構成、UNHCR等への寄付額によって、ふるさと納税の控除上限額がどのように変動するかを簡潔に示したシミュレーションです。
(※あくまで目安であり、個別の控除額は生命保険料控除や医療費控除など他の控除によって変動します。また、UNHCR寄付は所得控除方式で計算した場合の例です。)
| 年収 | 家族構成 | UNHCR等への寄付額 | ふるさと納税控除上限額(目安) |
|---|---|---|---|
| 500万円 | 独身 | 0円 | 約61,000円 |
| 500万円 | 独身 | 3万円 | 約58,000円 |
| 500万円 | 独身 | 5万円 | 約55,000円 |
| 700万円 | 共働き夫婦 | 0円 | 約113,000円 |
| 700万円 | 共働き夫婦 | 3万円 | 約109,000円 |
| 700万円 | 共働き夫婦 | 5万円 | 約105,000円 |

このシミュレーションからわかるように、UNHCR等への寄付額が増えるほど、ふるさと納税の控除上限額は減少する傾向にあります。これは、UNHCR等への寄付による所得控除が、ふるさと納税の控除上限額の計算基礎となる課税所得を減少させるためです。
したがって、両方の制度を最大限に活用するためには、事前に自身の年収、家族構成、そしてUNHCR等への寄付予定額を考慮し、ふるさと納税の控除上限額を再計算することが不可欠です。
併用時に絶対必須!確定申告の3つの注意点
UNHCR等への寄付とふるさと納税の控除を両方受けるためには、いくつかの重要な手続き上の注意点があります。特に、確定申告に関する以下の3つのポイントは必ず押さえておきましょう。
注意点1:ワンストップ特例制度は利用不可
ふるさと納税では便利な「ワンストップ特例制度」がありますが、UNHCR等への寄付とふるさと納税の控除を両方受ける場合、この制度は利用できません。必ず「確定申告」が必要になります。
ワンストップ特例制度は、確定申告が不要な給与所得者で、ふるさと納税先が年間5自治体以内である場合に限られます。UNHCR等への寄付は、ふるさと納税とは異なる「寄付金控除」として扱われるため、いずれかの寄付について確定申告を行う場合、他の寄付についても全て確定申告に含める必要があります。
注意点2:必要書類を事前に準備
確定申告を行うためには、以下の書類を事前に準備しておく必要があります。
- UNHCR等が発行する「寄附金受領証明書」: UNHCRから寄付後に送付されます。
- ふるさと納税の自治体が発行する「寄附金受領証明書」: 各自治体から寄付後に送付されます。
- 源泉徴収票(会社員の場合)
- マイナンバーカード(または通知カードと本人確認書類)
- 還付金受取用の口座情報 など
これらの証明書は再発行に時間がかかる場合があるため、寄付後すぐに届いているかを確認し、大切に保管しておきましょう。
注意点3:有利な控除方式を選択
UNHCR等への寄付金控除は、「所得控除」と「税額控除」のいずれか有利な方を選択できる場合があります(UNHCRは特定公益増進法人であるため両方選択可能です)。多くの場合、「税額控除」の方が有利になることが多いとされています。
- 所得控除方式: (寄付額 – 2,000円) が所得から控除され、課税所得が減ることで税金が安くなります。
- 税額控除方式: (寄付額 – 2,000円) × 40% の額が所得税額から直接差し引かれます(所得税額の25%が上限)。
税額控除は、所得税額から直接差し引かれるため、所得税率が低い方や、多額の寄付を行う場合にメリットが大きくなります。確定申告書を作成する際には、この選択肢を意識し、ご自身の所得状況に合わせて有利な方を選択するようにしましょう。多くの場合、確定申告ソフトが自動で有利な方を計算してくれるため、迷ったら税額控除を適用する形で入力してみてください。
手続き比較:確定申告 vs ワンストップ特例制度
UNHCR等への寄付とふるさと納税を併用する際に、なぜ確定申告が必須となるのかをより深く理解するために、両制度を比較してみましょう。
| 項目 | 確定申告 | ワンストップ特例制度 |
|---|---|---|
| 対象となる寄付の種類 | 全ての寄付金控除(UNHCR寄付、ふるさと納税、その他特定寄付金など) | ふるさと納税のみ(年間5自治体以内) |
| 手続きの手間 | 比較的複雑(書類準備、計算、税務署への提出またはe-Tax) | 比較的簡単(申請書記入・郵送) |
| 適用条件 | 誰でも利用可能 | 確定申告が不要な給与所得者、年間5自治体以内 |
| 併用の可否 | 他の控除と併用可能 | 他の控除と併用不可(確定申告が必要になる) |
| UNHCR寄付との関係 | UNHCR等への寄付がある場合は、必須 | UNHCR等への寄付がある場合は、利用不可 |

この比較表から明らかなように、UNHCR等への寄付を行う場合、ふるさと納税のワンストップ特例制度は利用できません。社会貢献への思いを実現しつつ、税制上の優遇を確実に受けるためには、確定申告が唯一の選択肢となります。
まとめ:仕組みを理解し、社会貢献と節税を賢く両立
UNHCRなど特定の国際機関への寄付とふるさと納税は、社会貢献と個人の節税を両立させる素晴らしい制度です。しかし、その控除の仕組みと手続きには、いくつかの重要な注意点が存在します。
本記事で解説した重要ポイントを再確認しましょう。
- ① 併用は可能: UNHCR等への寄付とふるさと納税は、両方で税制優遇を受けられます。
- ② ふるさと納税の上限額は他の寄付の影響を受ける: UNHCR等への寄付(特に所得控除方式)を行うと、ふるさと納税の控除上限額が減少する可能性があります。事前に自身の状況でシミュレーションすることが重要です。
- ③ ワンストップ特例は使えず確定申告が必須: UNHCR等への寄付とふるさと納税を併用する場合、必ず確定申告を行う必要があります。ワンストップ特例制度は利用できません。
これらの仕組みを正しく理解し、適切な手続きを踏むことで、あなたは自身の社会貢献への想いを実現しながら、経済的なメリットも享受することができます。
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ぜひ、自身の総所得金額の確認、寄附金受領証明書の保管、そして確定申告の準備を計画的に進めてください。正しい知識は、あなたの社会貢献活動と節税対策をより一層充実させる強力な味方となるでしょう。
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