「確定申告ソフトのクラウド版とPC版はデータ連携ができず、結局二度手間になるのでは?」
確定申告ソフトの導入や乗り換えを検討する際、このような不安を抱く個人事業主や小規模法人経営者は少なくありません。特に、これまでPC版を使っていた方がクラウド版への移行を考える際や、複数のデバイスでデータを共有したいと考える際には、この「データ連携」の壁が大きな懸念事項となります。
しかし、結論から言えば、多くの確定申告ソフトは完全なリアルタイム同期はしないものの、データ移行や一部連携は可能です。重要なのは、各ソフトがどのような連携仕様を持っているかを正しく理解することに尽きます。
この記事を読めば、主要な確定申告ソフトのクラウド版とPC版の連携仕様が明確になり、自身の使い方に合った無駄のないソフト選びができるようになります。データ入力の手間を最小限に抑え、効率的な確定申告を実現するための具体的なヒントもご紹介しますので、ぜひ最後までご覧ください。
連携の前提知識|クラウド版とPC(インストール)版の機能・スペック比較
データ連携の話に入る前に、まずは確定申告ソフトのクラウド版とPC(インストール)版の基本的な違いを整理しておく必要があります。それぞれの特徴を理解することで、なぜ連携に制限があるのか、どのようなユーザーに向いているのかが見えてきます。
両者の主な違いを、以下の5つの観点から比較します。
- 料金体系: 月額/年額サブスクリプション型か、買い切り型か。
- 機能の豊富さ: 自動仕訳やレポート機能、外部サービス連携など。
- 自動化・AI機能: 銀行口座・クレジットカード連携、レシート読み取り機能など。
- OS・デバイスの対応範囲: Windows/Mac、PC/スマートフォン/タブレットなど。
- サポート体制: 電話、チャット、メール、訪問サポートなど。
以下の比較表で、それぞれのメリット・デメリットをまとめています。
| 比較項目 | クラウド版(Webサービス型) | PC版(インストール型) |
|---|---|---|
| 料金体系 | 月額/年額のサブスクリプションが主流。常に最新版を利用可能。 | 買い切り型が主流だが、毎年更新版購入が必要な場合も。 |
| 機能の豊富さ | 自動仕訳、連携機能、AI活用など先進機能が充実。 | 安定した基本機能が中心。オフライン作業に強い。 |
| 自動化・AI機能 | 銀行・クレカ自動連携、レシート読み取りなど、業務効率化に特化。 | 連携機能は限定的。手動入力が中心となりやすい。 |
| OS・デバイス対応 | WebブラウザがあればOS問わず利用可。スマホ・タブレット対応。 | 特定OS(Windowsが多い)にインストール。利用デバイスが限定的。 |
| サポート体制 | チャット、メールが主流。オンラインヘルプも充実。 | 電話サポートが手厚い場合が多い。 |
| メリット | 場所を選ばず利用可、常に最新、自動化で効率的、複数人での共有容易 | 安定した動作、オフライン利用可、データが手元にある安心感 |
| デメリット | インターネット環境必須、月額費用発生、データはベンダー管理 | 最新機能への対応遅れ、デバイス限定、複数人での共有が複雑 |

この比較からもわかる通り、クラウド版は「自動化と場所を選ばない利便性」、PC版は「安定性とオフラインでの利用」に強みがあります。自身の業務スタイルに合わせて、どちらがより適しているかをまず判断することが重要です。
【本題】データ連携の3つのパターンと「連携できない」の正体
多くのユーザーが懸念する「クラウド版とPC版で連携できない」という言葉には、いくつかの誤解が含まれています。データ連携にはレベルがあり、どのレベルの連携を期待しているかによって「できる」「できない」の認識が変わってきます。
データ連携は、主に以下の3つのパターンに分類できます。
パターン1:データ移行(一方通行のインポート/エクスポート)
これは、あるソフトから別のソフトへ、またはPC版からクラウド版へ、データを一度だけ移すことを指します。例えば、PC版で作成した過去の会計データをCSVファイルなどでエクスポートし、クラウド版にインポートするケースがこれに該当します。
- 特徴: 基本的に一方通行で、リアルタイム性はありません。乗り換え時やバックアップ目的で利用されます。
- 「連携できない」との関係: データの「引継ぎ」は可能ですが、日常的な「同期」ではないため、「連携できない」と感じる原因の一つです。
パターン2:機能連携(ファイルのエクスポート/インポートによる限定的な連携)
これは、特定のデータ(例:仕訳データ、残高データなど)をCSVファイルや独自のファイル形式で出力し、別のソフトや版で読み込むことを指します。定期的に手動でエクスポート/インポートを行うことで、擬似的にデータを同期させる運用です。
- 特徴: リアルタイム性はなく、手動での操作が必要です。連携できるデータの種類も限定されることがあります。
- 「連携できない」との関係: 完全に自動化された連携ではないため、手間がかかることから「連携できない」と表現されることがあります。
パターン3:データ同期(一部ソフトで提供される限定的な双方向連携)
これは、クラウド版とPC版の間で、特定のデータが自動的に、または半自動的に同期されるパターンです。例えば、PC版で入力した仕訳データがクラウド版にアップロードされ、クラウド版で修正したデータがPC版にダウンロードされるような仕組みです。ただし、完全なリアルタイム双方向同期は、確定申告ソフトにおいては非常に稀であり、多くの場合、特定の操作やタイミングでの同期となります。
- 特徴: ある程度の自動化が図られていますが、完全なリアルタイム性や全データの同期を保証するものではありません。
- 「連携できない」との関係: ユーザーが期待する「常に最新のデータがどのデバイスでも見られる」というリアルタイム同期とは異なるため、「連携できない」と感じる最大の要因となります。
多くのユーザーが懸念する「連携できない」とは、主にこの「パターン3のような、完全なリアルタイムでの双方向同期ができないケース」を指していると理解することが重要です。
主要3大ソフト別!データ連携の仕様と注意点を徹底比較
ここでは、日本の確定申告ソフト市場で主要なシェアを持つ「弥生会計」「マネーフォワード クラウド」「freee」の3製品について、クラウド版とPC版(または他社ソフト)間のデータ連携の仕様と注意点を詳しく比較します。
| ソフト名 | クラウド版とPC版の概念 | データ連携の可否・方法 | 連携できるデータ項目(例) | 注意点・制限事項 |
|---|---|---|---|---|
| 弥生会計 | PC版が主軸、クラウド版も提供 | 「やよいのデータ連携ツール」でPC版とクラウド版の連携が可能。 | 仕訳データ、残高データ、マスタデータなど | 完全なリアルタイム同期ではない。連携ツールでの手動操作が必要。 |
| マネーフォワード クラウド | クラウドネイティブ | 他社PC版からのデータインポート機能あり。API連携が豊富。 | 勘定科目、仕訳、残高など | 基本はクラウド完結型。PC版という概念はなし。他社からの移行は可能。 |
| freee | クラウドネイティブ | 他社ソフトからのデータインポート機能あり。API連携が非常に豊富。 | 勘定科目、仕訳、残高など | PC版という概念はなし。会計freee自体が常に最新データで運用。 |

【弥生会計】「やよいのデータ連携ツール」の仕様
弥生会計は、伝統的にPC版(デスクトップアプリ)が主力であり、その後クラウド版も提供を開始しました。両者間のデータ連携には「やよいのデータ連携ツール」が用意されています。
- 連携方法: PC版の会計データをクラウド版へ、またはその逆方向へ、ツールを介して移行・同期させます。
- 連携できるデータ: 仕訳データ、残高データ、勘定科目などのマスタデータが対象となります。
- 注意点: このツールは完全なリアルタイム同期を意味しません。ユーザーが連携ツールを起動し、手動でデータのアップロード/ダウンロード操作を行う必要があります。例えば、PC版で入力した内容が即座にクラウド版に反映されるわけではなく、逆もまた然りです。そのため、複数のPCやデバイスで同時に作業を行うと、データの競合や上書きが発生するリスクがあるため、運用には注意が必要です。
【マネーフォワード クラウド】基本はクラウド完結型
マネーフォワード クラウドは、最初からクラウドサービスとして設計されており、PC版という概念は基本的にありません。そのため、クラウド版とPC版の連携というよりは、「他社PC版ソフトからの乗り換え時のデータインポート」が主な連携機能となります。
- 連携方法: 他社ソフトから出力されたCSVファイルなどをインポートすることで、過去のデータを取り込むことが可能です。
- API連携: 銀行口座やクレジットカード、POSレジ、ECサイトなど、外部サービスとのAPI連携が非常に豊富です。これにより、手入力を大幅に削減し、自動で仕訳データを取り込むことが主要な連携方法となります。
- 注意点: そもそもPC版が存在しないため、PC版とのリアルタイム同期を期待するものではありません。データは常にクラウド上にあり、どのデバイスからでも最新データにアクセスできます。
【freee】クラウドネイティブ
freeeもマネーフォワード クラウドと同様に、PC版という概念を持たないクラウドネイティブなサービスです。すべてのデータはクラウド上で管理され、インターネットに接続されたあらゆるデバイスからアクセスできます。
- 連携方法: 他社ソフトからの移行には、インポート機能が提供されています。
- API連携: マネーフォワード クラウドと同様に、銀行口座、クレジットカード、POSレジ、ECサイト、勤怠管理ソフトなど、幅広い外部サービスとのAPI連携に強みを持っています。これにより、取引データが自動的にfreeeに取り込まれ、自動仕訳機能によって会計処理が効率化されます。
- 注意点: PC版との連携という概念がないため、弥生会計のようなPC版とクラウド版の同期ツールは存在しません。freeeを利用する際は、クラウドサービスとしての一元的な運用が前提となります。
データ入力の手間を増やさないための3つの現実的な解決策
確定申告ソフトのクラウド版とPC版の連携に関する懸念を解消し、データ入力の手間を増やさないためには、以下の3つの現実的な解決策が有効です。
解決策1:運用を片方に統一する
最もシンプルで効果的な解決策は、クラウド版かPC版のどちらか一方に業務を完全に統一することです。併用によるデータの複雑さや同期の手間を根本から排除できます。
- クラウド版に統一する場合: インターネット環境があればどこでも作業できる、自動仕訳機能を最大限活用できる、複数人での共有が容易といったメリットを享受できます。
- PC版に統一する場合: オフラインでの作業が可能、手元にデータがある安心感、長年使い慣れた操作性などのメリットがあります。
どちらか一方に統一することで、データ連携に関する悩みがなくなり、業務フローがシンプルになります。
解決策2:CSVファイルのエクスポート/インポート機能を活用する
もし何らかの理由で両方を併用せざるを得ない場合や、特定のデータのみを共有したい場合は、CSVファイルのエクスポート/インポート機能を活用しましょう。
- 運用ルール化: 連携できない項目や、特定のタイミングで共有が必要なデータは、CSVファイルとして出力し、もう一方のソフトにインポートするという運用ルールを明確に定めます。
- 定期的な実行: 週に一度、月に一度など、決まった頻度でこの作業を行うことで、データの乖離を最小限に抑えられます。
- メリット: 多くのソフトがCSV形式での入出力に対応しているため、汎用性が高い方法です。
解決策3:API連携に対応した外部ツールやサービスを導入する
クラウド版ソフトの最大の強みは、外部サービスとのAPI連携です。銀行口座、クレジットカード、電子マネー、POSレジ、ECサイトなど、日々の取引が発生するサービスと連携することで、手入力を極限まで減らすことができます。
- 自動仕訳の活用: 連携したサービスから自動で取引データを取り込み、AIが自動で仕訳を推測・提案してくれる機能を最大限に活用します。これにより、データ入力の手間は大幅に削減され、連携による非効率性を補って余りあるメリットが得られます。
- レシート読み取り機能: スマートフォンアプリなどでレシートを撮影するだけで、日付、金額、勘定科目などを自動で読み取り、仕訳データを作成してくれる機能も積極的に利用しましょう。
これらの自動化機能を活用することで、「連携できない」ことによる手間の増加を気にすることなく、全体の業務効率を飛躍的に向上させることが可能です。
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まとめ:連携仕様の理解が、確定申告の手間を削減する鍵
確定申告ソフトのクラウド版とPC版の連携は、「できない」のではなく「制限がある」と理解することが非常に重要です。多くのユーザーが期待するような、常に完璧なリアルタイム双方向同期は、現時点では一般的ではありません。
しかし、各ソフトが提供するデータ移行機能、CSVによるファイル連携、そして何よりも銀行口座やクレジットカード、その他の外部サービスとのAPI連携を最大限に活用することで、データ入力の手間を劇的に削減し、トータルでの業務効率を向上させることが可能です。
最終的には、クラウド版とPC版のどちらを選ぶか、あるいはどのように併用するかは、貴社の業務フロー、インターネット環境、そして予算によって異なります。各ソフトの連携仕様を正しく把握し、自身の使い方に最も合うソフトを見極めることが、確定申告の手間を削減し、本業に集中するための鍵となるでしょう。
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