企業型DCやiDeCoの一時金と公的年金を同年中に受け取る方は、ふるさと納税の控除上限額が通常とは異なり、複雑な計算が必要になります。この記事では、なぜそうなるのかという税金の仕組みから、ご自身の正確な上限額を3ステップで算出する方法まで、専門的な視点からわかりやすく解説します。
計算ミスによる寄付のしすぎ(自己負担増)を防ぎ、退職後もお得な制度を最大限活用できるよう、ぜひ最後までお読みください。
【要注意】DC/iDeCo一時金と年金受給の年、ふるさと納税上限額は激変します
企業型DCやiDeCoの一時金(退職所得)と公的年金(雑所得)を同じ年に受け取る場合、ふるさと納税の控除上限額の計算は非常に複雑になります。多くの方が「退職金を受け取ると上限額が増える」と考えがちですが、実際にはその影響は限定的であり、むしろ「公的年金」の扱いが上限額に大きく影響します。
結論から申し上げると、ふるさと納税の上限額に大きく影響するのは「公的年金」であり、「一時金(退職所得)」の直接的な影響は限定的です。
この記事を読めば、なぜそうなるのかという税金の仕組みから、ご自身の正確な上限額を3ステップで算出する方法まで全て理解できます。計算ミスによる寄付のしすぎ(自己負担増)を防ぎ、退職後もお得な制度を最大限活用しましょう。

計算の前に必須知識!ふるさと納税上限額が決まる仕組みと基本式
ふるさと納税の控除上限額は、原則として住民税の「所得割額」が基準となります。この所得割額は、所得税や住民税の課税対象となる「課税所得金額」によって決まります。
ふるさと納税の上限額を計算するための基本的な式は以下の通りです。
基本計算式:上限額 ≒(住民税所得割額 × 20%) / (90% – 所得税率 × 1.021) + 2,000円
この基本式を理解する上で最重要ポイントは、「退職所得」と「公的年金(雑所得)」が、この『住民税所得割額』の計算にどう影響するかを理解することです。
全体の計算フローは、以下のようになります。
収入 → 所得 → 課税所得 → 住民税所得割額 → ふるさと納税上限額決定
このフローの中で、一時金(退職所得)と公的年金(雑所得)がそれぞれ異なる段階で、異なる影響を与えることを把握することが、正確な上限額算出の鍵となります。
※ふるさと納税の上限額計算フローの詳細は、各自治体や総務省のふるさと納税ポータルサイトで図解が提供されています。ご自身の状況に合わせてご参照ください。
STEP1:企業型DC/iDeCo一時金の「課税退職所得金額」を算出する
企業型DCやiDeCoの一時金は、「退職所得」として扱われます。退職所得は、他の所得(給与所得、年金所得など)とは合算せず、単独で税額を計算する「分離課税」が適用される点が大きな特徴です。
まず、一時金から退職所得控除を差し引いて、課税退職所得金額を算出します。
1. 退職所得控除額の計算
勤続年数によって控除額が変わります。
– 勤続年数20年以下の場合: 40万円 × 勤続年数(最低80万円)
– 勤続年数20年超の場合: 800万円 + 70万円 × (勤続年数 - 20年)
2. 課税退職所得金額の計算
退職所得控除額を差し引いた金額に1/2を乗じて算出します。
計算式:課税退職所得金額 = (一時金額 – 退職所得控除額) × 1/2
【ポイント】
退職所得にかかる所得税・住民税は、ふるさと納税上限額の計算基礎となる「住民税所得割額」には含まれません。 これは、退職所得が他の所得と分離して計算される「分離課税」の対象であるためです。このため、一時金(退職所得)の金額がどれほど大きくても、ふるさと納税の上限額に直接的な影響は限定的となります。
【計算例】勤続年数に応じた退職所得控除額と課税退職所得金額
| 勤続年数 | 退職一時金(例) | 退職所得控除額 | 差引額 | 課税退職所得金額 |
|---|---|---|---|---|
| 25年 | 1,500万円 | 800万 + 70万 × 5年 = 1,150万円 | 350万円 | 175万円 |
| 30年 | 2,000万円 | 800万 + 70万 × 10年 = 1,500万円 | 500万円 | 250万円 |
| 35年 | 2,500万円 | 800万 + 70万 × 15年 = 1,850万円 | 650万円 | 325万円 |
※上記の表は、勤続年数と一時金額に応じた退職所得控除額と課税退職所得金額の計算例です。ご自身の正確な勤続年数と一時金額を当てはめて計算してください。
STEP2:公的年金の「課税雑所得金額」を算出する
公的年金は「雑所得」として扱われます。雑所得は、給与所得など他の所得と合算して税額を計算する「総合課税」の対象となります。この「雑所得」が、ふるさと納税上限額の計算基礎となる「住民税所得割額」に直接影響するため、正確な計算が非常に重要です。
まず、公的年金等の収入金額から公的年金等控除額を差し引き、「雑所得の金額」を算出します。
計算式:雑所得の金額 = 公的年金等の収入金額 – 公的年金等控除額
公的年金等控除額は、受給者の年齢(65歳未満/65歳以上)と年金収入額によって変動します。
【計算例】年齢と年金収入額ごとの公的年金等控除額と雑所得
| 年齢 | 公的年金等の収入金額 | 公的年金等控除額の計算(例:令和4年分以降) | 雑所得の金額 |
|---|---|---|---|
| 65歳未満 | 100万円 | 収入金額が130万円未満の場合:一律60万円 | 40万円 |
| 65歳未満 | 200万円 | 収入金額が130万円以上410万円未満の場合:収入金額×25%+27.5万円 | 122.5万円 |
| 65歳以上 | 100万円 | 収入金額が330万円未満の場合:一律110万円 | 0円 |
| 65歳以上 | 300万円 | 収入金額が330万円未満の場合:一律110万円 | 190万円 |
| 65歳以上 | 400万円 | 収入金額が330万円以上410万円未満の場合:収入金額×25%+27.5万円 | 272.5万円 |
※上記の表は、年齢と公的年金収入額に応じた公的年金等控除額と雑所得の計算例です。控除額の詳細は国税庁のウェブサイト等で最新の情報を確認し、ご自身の正確な年金収入額を当てはめて計算してください。

STEP3:所得控除を差し引き、ふるさと納税の上限額を最終計算する
STEP2で算出した雑所得と、もし給与所得など他の総合課税対象となる所得がある場合はそれらを合算し、そこから各種「所得控除」を差し引くことで、「課税総所得金額」を確定させます。
主な所得控除の種類
– 基礎控除(合計所得金額に応じて48万円〜)
– 社会保険料控除(支払った社会保険料の全額)
– 生命保険料控除
– 医療費控除
– 配偶者控除
– 扶養控除
– 寡婦控除・ひとり親控除
– 勤労学生控除
など
計算プロセス
-
課税総所得金額の算出
STEP2で算出した雑所得 + その他の総合課税所得 – 各種所得控除 = 課税総所得金額 -
住民税所得割額の算出
課税総所得金額 × 住民税の税率10% (通常)= 住民税所得割額
※調整控除など、一部控除が適用される場合もあります。 -
所得税率の確認
課税総所得金額に応じた所得税率(5%〜45%)を確認します。
※所得税は復興特別所得税として1.021を乗じます。 -
最終的な上限額の算出
算出した「住民税所得割額」と「所得税率」を、最初の基本計算式に当てはめて、最終的なふるさと納税の上限額を算出します。上限額 ≒(住民税所得割額 × 20%) / (90% – 所得税率 × 1.021) + 2,000円
この3ステップを順を追ってご自身の状況に当てはめることで、正確なふるさと納税の控除上限額を導き出すことができます。
モデルケース別|あなたのふるさと納税上限額シミュレーション
具体的なイメージを持っていただくため、3つのモデルケースでふるさと納税の上限額をシミュレーションしてみましょう。
※以下に提示する数値は、税率や控除額などを簡略化した概算値であり、あくまでモデルケースです。実際の計算はご自身の正確な所得や控除額に基づいて行ってください。
※このシミュレーションは一般的な税制に基づいた概算であり、個々の状況(住宅ローン控除、医療費控除、生命保険料控除額、配偶者の所得など)により変動します。正確な金額はご自身の源泉徴収票や確定申告書でご確認ください。
ケース1:65歳・単身世帯|年金収入300万円、DC一時金1,500万円(勤続35年)の場合
-
STEP1:DC一時金(退職所得)
- 退職所得控除額:800万 + 70万 × (35年 – 20年) = 1,850万円
- 課税退職所得金額:(1,500万円 – 1,850万円) → 0円(控除額が一時金を上回るため課税所得なし)
- ふるさと納税上限額への直接影響:なし
-
STEP2:公的年金(雑所得)
- 公的年金等控除額(65歳以上、収入330万円未満):110万円
- 雑所得の金額:300万円 – 110万円 = 190万円
-
STEP3:所得控除、課税所得、上限額の計算(概算)
- 課税総所得金額:190万円(雑所得) – 基礎控除48万円 = 142万円
- 所得税率(課税所得195万円以下):5%
- 住民税所得割額:142万円 × 10% = 14.2万円
- ふるさと納税上限額:
(14.2万円 × 20%) / (90% – 5% × 1.021) + 2,000円 ≒ 約31,000円
ケース2:65歳・配偶者あり(収入なし)|年金収入400万円、iDeCo一時金1,000万円(勤続30年)の場合
-
STEP1:iDeCo一時金(退職所得)
- 退職所得控除額:800万 + 70万 × (30年 – 20年) = 1,500万円
- 課税退職所得金額:(1,000万円 – 1,500万円) → 0円(控除額が一時金を上回るため課税所得なし)
- ふるさと納税上限額への直接影響:なし
-
STEP2:公的年金(雑所得)
- 公的年金等控除額(65歳以上、収入330万円以上410万円未満):400万円 × 25% + 27.5万円 = 127.5万円
- 雑所得の金額:400万円 – 127.5万円 = 272.5万円
-
STEP3:所得控除、課税所得、上限額の計算(概算)
- 課税総所得金額:272.5万円(雑所得) – 基礎控除48万円 – 配偶者控除38万円 = 186.5万円
- 所得税率(課税所得195万円以下):5%
- 住民税所得割額:186.5万円 × 10% = 18.65万円
- ふるさと納税上限額:
(18.65万円 × 20%) / (90% – 5% × 1.021) + 2,000円 ≒ 約40,000円
ケース3:62歳・単身世帯|年金収入150万円、DC一時金2,000万円(勤続40年)の場合
-
STEP1:DC一時金(退職所得)
- 退職所得控除額:800万 + 70万 × (40年 – 20年) = 2,200万円
- 課税退職所得金額:(2,000万円 – 2,200万円) → 0円(控除額が一時金を上回るため課税所得なし)
- ふるさと納税上限額への直接影響:なし
-
STEP2:公的年金(雑所得)
- 公的年金等控除額(65歳未満、収入130万円以上410万円未満):150万円 × 25% + 27.5万円 = 65万円
- 雑所得の金額:150万円 – 65万円 = 85万円
-
STEP3:所得控除、課税所得、上限額の計算(概算)
- 課税総所得金額:85万円(雑所得) – 基礎控除48万円 = 37万円
- 所得税率(課税所得195万円以下):5%
- 住民税所得割額:37万円 × 10% = 3.7万円
- ふるさと納税上限額:
(3.7万円 × 20%) / (90% – 5% × 1.021) + 2,000円 ≒ 約8,000円
これらのモデルケースからわかるように、DC/iDeCo一時金が退職所得控除額を下回る場合、ふるさと納税の上限額に直接的な影響はほとんどなく、公的年金による雑所得の金額が上限額を大きく左右します。
計算前に確認必須!退職年のふるさと納税に関する注意点Q&A
Q1. 住宅ローン控除がある場合、上限額は変わりますか?
A. 変わります。住宅ローン控除は、所得税や住民税から直接控除される税額控除であるため、ふるさと納税の上限額の計算基礎となる「住民税所得割額」を減少させる可能性があります。これにより、ふるさと納税の上限額が下がるケースがほとんどです。ご自身の住宅ローン控除額を考慮して計算する必要があります。
Q2. 一時金ではなく、全額を年金形式で受け取った場合は?
A. ふるさと納税の上限額は大きく増える可能性が高いです。一時金で受け取った場合は分離課税の退職所得となりますが、年金形式で受け取ると全額が「雑所得」として毎年総合課税の対象となります。雑所得はふるさと納税の上限額計算の基礎となるため、所得が増える分、上限額も増えることになります。ただし、年金形式での受給は公的年金等控除の適用があるため、全額がそのまま課税対象になるわけではありません。
Q3. 確定申告は必要ですか?
A. 退職所得の受給に関する申告書を提出済みで、公的年金等の収入が400万円以下、かつ年金以外の所得が20万円以下といった条件を満たせば、確定申告が不要な場合もあります。しかし、ふるさと納税を行う場合(ワンストップ特例制度を利用しない場合)は、原則として確定申告が必須となります。また、医療費控除や住宅ローン控除を初めて受ける場合も確定申告が必要です。ご自身の状況に合わせて判断し、不明な場合は税務署に相談しましょう。
Q4. ふるさと納税サイトのシミュレーターは使えますか?
A. 基本的には使えますが、注意が必要です。多くの簡易シミュレーターには「退職所得」の入力欄がないため、一時金を受け取った年の正確な計算には向いていません。必ず「詳細シミュレーション」を利用し、源泉徴収票(退職所得の源泉徴収票を含む)や公的年金の情報を正確に入力する必要があります。複雑な場合は、複数のシミュレーターを試したり、自治体や税理士に相談したりすることをおすすめします。
まとめ:仕組みの理解と正確な計算で、退職年のふるさと納税を成功させる
DC/iDeCo一時金(退職所得)と公的年金がある年のふるさと納税上限額の計算は複雑ですが、以下のポイントを理解すれば正確に算出することが可能です。
- 最重要点:ふるさと納税の上限額の基礎となる住民税所得割額に「退職所得は含まれず、公的年金(雑所得)は含まれる」という違いを理解すること。
- DC/iDeCo一時金(退職所得):分離課税のため、上限額への直接的な影響は限定的。まずは退職所得控除額を正確に計算し、課税退職所得金額を算出します。
- 公的年金(雑所得):総合課税のため、上限額に直接的に影響します。年齢と年金収入に応じた公的年金等控除額を適用し、正確な雑所得金額を算出します。
- 最終計算:雑所得を含む総合課税所得から各種所得控除を差し引いて課税総所得金額を確定し、住民税所得割額と所得税率を割り出して、基本計算式に当てはめます。
この記事でご紹介した3ステップに沿って、ご自身の所得と控除を当てはめて正確な上限額を計算することで、寄付のしすぎを防ぎ、お得にふるさと納税を最大限活用できるでしょう。
複雑で不安な場合は、寄付先の自治体や税務署、税理士などの専門家へ相談することも有効な手段です。
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